平成28年平成の武者修行

  • 我々、『平成の武者修行』運営スタッフとネッツ南国の新人6名は高知龍馬空港にいました。本日は南国土佐の夏の祭典「よさこい祭り」の初日、空港ロビーは観光客で溢れかえっています。今回の日程は例年、高知でもとびきり暑いうえに降水確率が低い時期。けれども、私たちには115kmの歩き遍路という過酷な旅が待ち構えていたのでした…。

    どんな子がくるだろう?ちゃんと見つけられるかな?仲良くなれるかな?中学生たちを出迎える私たちは、ただただ緊張していました。日本の各地(新潟、佐賀、東京、香川、富山)から高知に一人やって来た"若侍"。彼・彼女たちの不安を吹き飛ばすべく、皆でアイデアを出し合って、中学生一人ひとりに違ったパフォーマンスを用意してお迎えしました。ハイタッチしたり、人間アーチをしたり。若侍たちはあまりにハイテンションな歓待に驚いているようでしたが、こわばった気持ちがほぐれた瞬間の笑顔を見た時、これから始まる旅が「いい旅になるぞ!」と予感しました。さすが、ネッツ南国のおもてなし魂!!

    若侍が揃うと、お遍路グッズを買いに専門店へ。杖、笠、輪袈裟、納経帳。いろいろな種類や色柄の中から、お気に入りを見つけます。カタチが整うと、皆すっかり「お遍路さん」気分♪常備薬やスポーツドリンクなども大量に買い込んで、準備完了です。とっても明るいネッツ南国の新人たちのおかげで、皆が打ち解けるのに時間はかかりませんでした。

    夕方、一緒に歩くメンバーとサポートメンバー全員が宿の一室に集いました。全国から集った5人の若侍、ネッツ南国の新入社員6人、お遍路指南をして下さる先達さん、そして私たちビスタワークス研究所のサポートクルーを合わせて総勢17人です。一人ひとり、それぞれが今、夢中になっていることを語りながら自己紹介をしました。みんなの溢れる個性が見えはじめ…「このメンバーと共に歩くんだ」という覚悟が芽生えた一日目でした。

  • 1日目
  • 2日目
  • 午前中は室戸ジオパークを観光した後、昼食。私は、以前から気になっていた名物『室戸キンメ丼』をオーダー♪港町の新鮮な魚はやはり別格でした。歩き遍路に向け、エネルギーチャージ完了!そして始まった武者修行本番、歩き遍路の旅。若侍とネッツ南国の新人たちがチームを組んで、115 km先のゴールを目指します!円陣を組んで気合いを入れてから、まず目指すのは24番札所の最御崎寺。青い空、白い雲の下、真っ赤なハイビスカスが咲く国道沿いをゆっくりと歩きます。余裕の表情も、スタートから2キロほどのスカイライン上り口辺りで早くも見えなくなり…。いえいえ、まだまだ元気です!

    最御崎寺に着くと、まずは正式な参拝作法を学びました。先達さんにならい、山門でまず一礼。気持ちを落ち着けてから手を清めて境内へ入ります。ろうそくを灯し、お線香をあげて読経した後、参拝の証に納経帳に御朱印をいただきます。最初は手順に慣れていないため、お線香を折ってしまったり、読経は漢字の読み仮名を追うだけで必死の様子。25番札所・津照寺、26番札所・金剛頂寺と巡るなかで少しずつ様になってきて、真剣に参拝する姿が印象的でした。

    暑い中を歩いていると、出会った地元の方が「えらいね、がんばりよ」と声援を送ってくださいました。地栗を差し入れてくださった方も。お遍路さんをおもてなしする優しい文化が根付く我が故郷を誇りに思い、ほっこりと心があたたかくなりました。土佐弁に馴染みがないせいか、フレンドリーな地元の人に恥ずかしがる若侍もいましたが、きちんと挨拶を交わすネッツ南国新人たちを真似て、少しずつ「ありがとうございます!がんばります!」と積極的に言えるようになりました。子どもたちの順応の早さは驚きです。遍路装束に袖を通した瞬間から、私たちは修行者。挨拶はもちろん、マナーをきちんと守りながら歩を進めます。お宿は、金剛頂寺の宿坊(お寺が修行者のために構えた宿泊所)でした。新鮮な海の幸たっぷりの晩ごはんでエネルギーをしっかり補給しました。初日を歩き終え、想定以上に身体の疲労や痛みを感じていて、準備していた湿布が早くも品切れに…。皆でケアをし合って明日に備えます。

  • 今回の旅のヤマ場は、この日だったのかもしれません。一日に歩く道のりは33km。目的地は標高450メートルの高台にある神峰寺ただ1ヶ寺。慣れない長距離歩行の疲れが出始めました。容赦なく照りつける南国の日差し、足のマメや捻挫の痛み、つらい上り坂に、心と身体の元気がどんどん奪われていきます。約4km間隔で待ち受ける休憩スポットの救護車を目指し、一歩一歩進みます。

    そんな中、どうしたら皆でこの状況を乗り越えることができるのか、自然に考え始めている自分がいました。メンバー全員が同じように考えていたと思います。仲間に声をかけて励まし合ったり、足を痛めたメンバーに歩くペースを合わせたり、冷たい飲み物を差し入れたり。しりとりや、オリジナルの言葉ゲームを楽しみながら歩くチームもありました。休憩の時にはマッサージや手当てをし合いました。自分はたくさんの人に支えられていることを感じ、素直に、感謝の気持ちが生まれてきます。神峯寺までの最後の2時間の上り坂は大人でもハードでしたが、「苦しいのは自分だけじゃない」と歩き続ける若侍たちの姿に心打たれました。ゴールした時の仲間たちの声援が心から嬉しく、その時見下ろした夕やけは一生忘れないと思います。きつい山道の続いたラスト2kmは若侍たちのほとんどが完歩できませんでしたが、この悔しさをバネに明日も頑張ろう!

    今では、ほとんどがアスファルトで舗装されている「へんろ道」。けれど、この日歩いた道には、弘法大師の時代の雰囲気を感じる険しい山道や砂利道が所々残っていて、個人的には"修業"気分が盛り上がった一日でした。

  • 3日目
  • 4日目
  • 昨日の最長行程を乗り越え、絆が一段と深まったメンバーと共に、今日は宿泊所を出て28番札所・大日寺、29番札所・国分寺までの約40 kmに挑戦しました。これまでは土佐湾に面した海沿いを歩いてきましたが、ついに高知平野の内側に入ります。やっとここまで来ました!

    皆、満身創痍。この日は、歩くメンバーの身体の状態に大きく差が現れていました。疲労や筋肉痛のある人、マメが潰れてキズになっている人、捻挫などで腫れができた人。それぞれに抱える問題は違いますが、自分や仲間の身体の状態に心を配り、チームでそれぞれに考えて、歩くペース配分やケア方法を工夫しながらゴールを目指します。私は休憩の度に、若侍の足裏をマッサージしました。体重を一点で受けている足の裏を休めると、一時的ではありますがかなり楽になります。この数日歩いた経験から、体調に合わせて臨機応変に対処することができるようになりました。

    日が暮れてくると気温が下がり、士気も下がる中、やっとの思いで国分寺に辿り着いたのは18時前。ゴールした少し後に、国分寺の鐘が鳴りました。お寺で夕方に鐘の音を聞くなんて…風流な気分に浸っていると、あれ、鐘楼に誰もいません。現代のお寺の鐘はなんと全自動式。びっくりして面白くて疲れが少し吹き飛びました(笑)。

    全員がゴールする頃には、辺りは真っ暗。皆ヘトヘトになっていましたが、心も身体もギリギリ状態の中、揃ってゴールすることができた仲間を誇りに思います。明日は最終日、全員で武者修行のゴールが切れるように、頑張ります!

  • 歩き遍路、最終日の今日。国分寺をスタートし、善楽寺、最終ゴールの竹林寺を目指します。17 kmの道のりです。善楽寺に近づく頃には、道中の景色は畑や田んぼから街並みへと変わり、高知県を東から西に大移動してきた実感がいよいよ湧いてきました。皆、疲労も痛みも最高潮です。私は、隣で頑張る仲間と一緒にゴールしたいという一心で竹林寺を目指していました。

    市街地を通り、五台山の山道を登り、ついにゴールである竹林寺に到着。いつもは苔や木々の緑に包まれ静かな雰囲気の竹林寺なのですが…、あいにく境内は観光客でごった返す時間帯で、皆でゴールの喜びを分かち合うムードにはならなかったのが心残りと言えば心残り。でも、皆も「やったー」とはしゃぐ心境でもなく、「着いちゃったね」という感じでした。これまでのプロセスを乗り切った満足感は確かにありましたが、それよりもこれで旅が終わってしまうさびしさの方が大きかったのかもしれません。

    そして、最後の読経。一緒に歩いたメンバーを見渡しながら、素晴らしいメンバーと共に、素晴らしい体験ができたことを誇りに思い、感謝の気持ちとともに涙が溢れてきました。皆それぞれ、思いを持っているように見えました。武者修行の振り返りミーティングでは、みんな笑っていたのが印象に残っています。もちろん、私もです。疲れる、暑い、足が痛い、もうやめたい…。たくさんの我慢がありました。けれど、115 kmの道中のつらさよりも、素晴らしい仲間と武者修行を通じて高め合うことができたという確かな実感のほうが大きく、笑顔の源となっていました。その後のお別れパーティーでも、笑顔は絶えません。はしゃいでネッツ南国スタッフとじゃれ合う若侍たち。みんなでお菓子を食べて、大人はアルコールもちょっぴりいただきました。5日間も一緒にいたのに、このメンバーでこんなにリラックスして過ごすのは最初で最後だと思うと…流れていく時間が恨めしくも思えました。その夜は、宿の部屋の灯りが遅くまでついていました。

  • 5日目
  • 6日目
  • 解散の日。6日前に出迎えた高知龍馬空港で若侍たちをお見送りしました。この夏、このメンバーが集まった「平成の武者修行」は、まさに一期一会の旅。一生に一度きりの機会でした。けれど、またすぐ会えるような気持ちで若侍たちを見送った私。別れの不安やさみしさを感じなかったのが不思議でした。ネッツ南国の新人たちも、若侍たちとそれぞれに別れを惜しんでいました。「元気でね」「またおいで」と声を掛け合ったり、抱き合って涙がこぼれる一幕も。それぞれの思いを胸に帰路につく若侍たちの表情には、出迎えた時の心細そうな様子は全くありませんでした。困難を乗り切った自信からか、頼もしさを感じました。この後、1週間ぶりに我が家に帰った若侍たちは、ご両親にこの旅のことをどんな風に伝えるのかな…。気になるところです。

    心も身体もしんどくなり、気持ちが折れそうになった時、一緒に頑張ってくれたメンバーや、サポートしてくださったスタッフの皆さんのお陰で、歩き切れた自分がいます。みんな、本当にありがとう。おつかれさまでした!

    「115 kmを歩き切る力」は、中学生たちも、ネッツ南国の新人たちも、そして私も、それぞれがすでに持っていたものだと思います。けれど、普段の生活の中では発揮する機会がなく、使われていなかった力です。今回の『平成の武者修行』を通して、仲間と共に歩きながら、感じ、語り合う"非日常"の体験を通して、自分の中に眠っていた力に気付くことができました。そうさせたのは、一緒に歩いた仲間の存在や、サポートしてくださったスタッフの存在、そして地元の人の声援と、高知の大自然の風景など…五感で感じたすべてのことだったと思います。

    また、中学生たちやネッツ南国の新人たちと関わる中で、仲間の大切さや感謝の気持ちを学びました。それぞれがいろいろなことを感じ、成長するのを目の当たりにし、私たち大人もしっかりしなければと、背筋が伸びる思いです。歩くスピードと目線で、長い時間高知の大自然に触れ、道中は土佐の人の人間味にたびたび触れる中で、やっぱり私はここ高知が大好きだなあと認識した旅でした。